幻燈データベース(暫定版)
幻燈デジタル・アーカイブ(暫定版)の公開にあたって
 収録資料例
資料番号:41501-735
資料番号:41501-742
資料番号:41501-674
資料番号:41501-631
 幻燈機(マジック・ランタン)は、映画以前に存在した映像の投影装置である。 スライドに描かれた絵や写真をレンズによって拡大し、ランプやガス灯、後には電燈の光によってスクリーンに投影した。 17世紀頃に西欧で発明され、貿易やキリスト教の伝道にともない18世紀には日本に伝来している。 このとき伝来したマジック・ランタンが寄席の演目に取り入れられることで誕生したのが、「写し絵」である。 写し絵は、「風呂」と呼ばれる木製の投影装置を複数の写し手が巧みに操ることで、スクリーンに変幻自在の映像を映し出す独特の映像文化であった。 彩色されたスライド(種板)の変化と、語り、音曲が組み合わされることで、三番叟や達磨の滑稽譚、あるいは勧進帳や四谷怪談といった物語が演じられた。

 江戸時代に寄席の演目に取り入れられ、人気を集めたマジック・ランタンは、明治期になると一転して教育用具として用いられるようになる。 文部省により再輸入されたマジック・ランタンは、今度は「幻燈」と呼ばれ、授業用の映像提示装置として各地の学校への貸出が推進されていく。 民間業者が廉価な機器の販売をはじめる明治20年代には、ほとんどの小学校に幻燈機が行き渡ることになった。 一方、教育の外側においても、古くから語り継がれる物語のスライドが時に啓蒙的、時に滑稽な語りとともに人気を集め、 磐梯山噴火や日清戦争、日露戦争の際には、映像と語りによって現場の状況を伝えるなど、先駆的な報道の役割も果たした。 また各地の土産物や子供の玩具として流通したスライドには、当時の風俗や風景の面影が数多くとどめられている。 「幻燈熱」とも呼ばれたその流行の様子は、明治時代に幼少期を過ごした作家たち、たとえば宮沢賢治、江戸川乱歩、小山内薫、芥川龍之介といった 作家たちの作品にも記録されており、後に伝来したシネマトグラフの日本における急速な流通を準備していたことを窺わせる。

 演劇博物館に所蔵されている2000点近い前映画史に関わる資料群は、映画以前に存在した日本の映像文化の実態を明らかにする、 きわめて貴重な証言であるといえるだろう。今回はこうした資料のうち、1200点を超える幻燈スライドをデジタル化し、広く公開する。 この幻燈デジタル・アーカイブの公開によって、映画・映像学、メディア研究、美術史、文化史などの研究者のみならず、 日本の映像文化に関心を持つすべての方々に、館蔵資料が広く活用されることを願っている。 また、映画以前に存在した映像文化の多様性を明らかにするこれらの資料は、「映画」の輪郭が揺らぎはじめ、 さまざまなスタイルの映像が私たちの日常生活を再編しつつある現在に、新たな角度から光をあてるものとなるだろう。

*今回公開するのは、暫定版となります。より詳細な情報を追記したデータベースの本公開は2014年度末の予定です。

*演劇博物館では、データベースの充実や資料の保護・保存のため、幻燈機やスライドに関わる情報を募集しています。 公開しているスライドに関する情報(題材、年代、製作者など)や、幻燈機・スライドの所蔵についての情報、 また寄贈や寄託のご相談は以下のメールアドレスまでご連絡ください。



データ入力:上田学、遠藤みゆき、大久保遼、向後恵里子、馬場靖人
更新情報
2015.06.03 データ更新(+623件)
2014.07.30 試験版作成